1.衝撃に弱い従来型ヘッド
 輸送中や施工中にヘッドを落としてしまったり、設置後ヘッドに何か物をぶつけてしまったりすると、ヘッドに衝撃が加わります。それが例えわずかな衝撃であっても、従来のヘッドでは内部構造がダメージを受け、誤作動放水や水漏れ等の故障の原因となります。また誤作動放水や水漏れはヘッドに衝撃が加わった直後に発生する物もあれば、衝撃が加わった後、長い年月が経ってから火災でもないのに突然に誤作動放水する物、あるいは突然に水漏れが発生する物もあります。また加わった衝撃によってヘッド自体に変形や傷等の明らかな痕跡が残らない場合には、やっかいな事に外観から正常品と異常品の見分けは全くつきません。そのため施工を行う場合は知らずに取り付けられる、また設置後に分からずに放置される場合があり、従来型のヘッドでは、このようなヘッドに加わった衝撃が、突然の誤作動放水や水漏れの原因となっていました。そのため今までの従来型ヘッドでは
スプリンクラーヘッドとは、衝撃に弱い事が当然である。
とされて来ました。
 2.誤作動放水による被害
 ヘッドから放水される水は大量で散水半径も広く、誤作動放水すると水による多大な損害が発生してしまいます。ヘッドはあらゆる所に設置されているため、ヘッドの誤作動放水によって取り返しがつかない程の被害が発生する場合もあります。関係者の間では「ヘッドが泣く(ヘッドが水漏れする事)」や「ヘッドには原因不明の暴発(誤作動放水)の心配がある」と言う言葉を耳にするのも、従来のヘッドとはこれ程までに衝撃に弱く繊細な物であったからなのです。
 3.湿式予作動システム
 このように従来型のヘッドとは衝撃に対して非常に弱い物であり、取り扱いのやっかいな物とされてきました。しかしその従来型ヘッドの弱さを補うための対策として、“湿式予作動システム”が採用されてきました。これは通常のスプリンクラーシステムに加え、火災感知器からの火災信号が出ない限り配管内のバルブ(予作動式流水検知装置)が解放する事のないシステムです。つまりヘッドが火災時以外に誤作動放水しても、配管内のバルブが解放しないため、その放水による損害を少なく抑える事ができるというものです。しかしこのシステムは非常に複雑であり、あまりにも大きなコストがかかってしまうと言う事が難点となっています。
 このような複雑な“湿式予作動システム”が開発された経緯、また非常にコストがかかるにも関わらず“湿式予作動システム”を採用せざるを得ない状況もあると言う背景からも、いかにヘッドの誤作動放水による損害が深刻であるかが分かります。

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