1.レバー式ヘッドについて
 ヘッドの内部構造を大きく分けると、常に高い水圧を止水している『止水部』と、作動時に分解して落下する『分解部』の二つに分けられます。従来型ヘッドの構造は、この分解部に“レバー”というパーツを用いている事から“レバー式”または“レバー二点支持式”と呼ばれる物です。現在国内で使用されているヘッドのほとんどがこのレバー式です。この構造は埋込型のヘッドでは最も歴史が長く、古くからごく一般に採用されて来たオーソドックスな物です。
レバー式ヘッド
 ヘッド下部には熱を感知する感熱板があります。
 感熱板の内部には分解部があり、左右一対のレバーが見えています。
 2.止水部
 ヘッドはノズル内部で配管内の高い水圧を常に止水し続けています。レバー式ヘッドの場合、この止水部には薄い銅板製の“ガスケット”が用いられています。ノズル先端の鋭利にとがらせたエッジ部とバルブの間に、この銅板製のガスケットを強力な力で挟み込む事によりメタルタッチ方式で止水を行っています。止水するためにガスケットを挟み込んでいるこの力を“止水荷重”と呼びます。配管内部の消火用水の水圧は非常に高いため、この止水荷重も高くする必要があり、約100daN(100kgf)という強力な止水荷重でガスケットを挟み込んで止水しています。

 3.分解部
 この強力な止水荷重は、その反力としてバルブから下部の分解部に加わっています。そして分解部の2つのレバーを介する事により荷重は軽減され、1/10以下の荷重となってヒューズ(低温ハンダ・表示温度72℃のヘッドの場合は72℃で融解するハンダ)に加えられています。つまり約100kgfという非常に強力な止水荷重は1/10以下の低い荷重となりヒューズを圧縮した状態で分解部全体のバランスを保っているわけです。そして火災が発生し、その熱によりこのヒューズが溶け出すと、分解部のバランスが崩れ分解して落下する事によりヘッドが作動します。
 4.ヒューズについて
 ヒューズ(低温ハンダ)は金属なのですが、火災の熱を早期に感知するため、72℃の比較的低い温度で融解する低融合金であり、止水荷重のような強力な力に耐える事はできません。そのため止水荷重をレバーにより1/10以下に軽減させてヒューズに加えられています。
 この約100kgfと言う強力な止水荷重はヘッドを組み立てる時に、止水力として内部に加える荷重です。ヘッドを組み立てる時に加えるこの内部荷重の事を“組立荷重(くみたてかじゅう)”と呼びます。つまりレバー式ヘッドはヘッド自体を組み立てている荷重によって止水荷重を発生させているわけです。またこの組立荷重と、これを軽減させてハンダに加わっている荷重の比を“レバー比”と言います。つまりヘッドはレバー比が1/10以下で設計されている事になります。このヒューズに加わる荷重は非常に重要であり、レバー比とヒューズに加わる荷重は各メーカーにより厳密に設定され、極めて精密にコントロールされています。
上記はアイエス製・従来型ヘッド S72-M80 (生産は終了しています)

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