1.完璧な止水部と強固な分解部
 アイエス製・耐衝撃型ヘッドの内部構造は、一般的なレバー式ヘッドとは全く異なります。止水部は信頼性の高いOリングによる差し込み式にしており、また分解部は衝撃に強いボール8点支持方式を採用しています。この『止水部』と『分解部』の構造はアイエススプリンクラーが独自に開発した全く新しい技術であり、これによって今までになかった、高い耐衝撃性能を備えた、耐衝撃型スプリンクラーヘッドが可能となりました
(耐衝撃型ヘッド断面)
 2.耐衝撃型ヘッドの止水部
 耐衝撃型ヘッドの止水部には、フッ素ゴム製のOリング(オー・リング)を使用しており、このOリングを装着したバルブをノズル内部に差し込んで止水を行っています。この方式は一般的な止水方法としては信頼性が高く、多方面で様々な用途に使用されています。
 但し、一般的なOリングの材質であるEPDMやNBR等はスプリンクラーヘッドの止水部への使用には適してはいません。実際にアメリカで止水部にEPDM製Oリングを使用したヘッドが作動不能となり、膨大な数のリコールが発生しています。しかしアイエスでは耐衝撃型ヘッドの開発の際、Oリングをスプリンクラーヘッド止水部に使用するためには、一般的なEPDMやNBR等の材質のOリングでは危険でであると判断し、特に慎重に徹底した調査・選定を行いました。フッ素ゴムはヘッドの止水部への使用に最も適した材質であり、このフッ素ゴム製のOリングこそが、スプリンクラーヘッドに使用する事のできる十分な信頼性を持った材質である事を確認しています。
 3.Oリングによる2つのメリット
1. 放水点まで充分なストロークがある。
 レバー式ヘッドのようにガスケットをノズルエッジ部への押圧させる止水方式の場合、ガスケットとノズルエッジ部がほんのわずかでも離れると、たちまち水が噴出してしまいます。しかし耐衝撃型ヘッドでは、Oリングを装着したバルブをノズル内部に差し込んで止水しています。そしてその差し込んだ状態からバルブが抜け出て来て、水が噴き出す放水点までのストロークを1mm以上持たせて設計しています。そのため仮にバルブが1mm程度抜け出たとしても止水は保たれ、水が噴出する事はありません。
(作動時以外に1mmも抜け出る事は考えられません。)
2. 止水を内部荷重に依存していない。
 レバー式ヘッドは、“組立荷重”という強力な内部荷重によって止水荷重を発生させていました。そのためこの組立荷重が低下すると、そのまま止水力も低下してしまいました。 しかし耐衝撃型ヘッドのOリングによる止水方法の場合、レバー式ヘッドのように押さえ付ける力で止水を行っているのではないため、止水力と荷重は全く関係がありません。レバー式ヘッドとは、根本的な考え方が全く異なります。強力な荷重を加えなくても、Oリングが装着されているバルブさえ抜けないよう保持しておけば、止水性能は完璧に保たれるのです。つまりレバー式ヘッドのように止水力を組立荷重に依存する必要がないわけです。そのためレバー式のヘッドの組立荷重は約100daN(100kgf)という強力な荷重でしたが、耐衝撃型ヘッドは組立荷重を15〜20daN(15〜20kgf)と低く抑えており、レバー式ヘッドの1/5以下の低い荷重で組み立てています。この組立荷重とはヘッドが完成品の状態にある時、常にヘッド内部に加わり続けている“内部応力”です。この内部応力が低く抑えられているため、非常に安全性が高く無理のない構造となっています。他の構造のヘッドと違い、耐衝撃型ヘッドの組立荷重は止水するための荷重ではなく、単にヘッド自体を組み立てているだけの荷重であり、この荷重が下がったとしても、止水性能を含むヘッドの基本性能には何ら影響はありません。
 4.分解部
 耐衝撃型ヘッドではバルブをノズル内部に挿入し、ノズル内段部に当接させる事によりヘッド内部に組立荷重を加えています。またその反力はバルブピンによって分解部のスライダーに加わっています。
 バルブピンからスライダーに加わった組立荷重は、分解部の8個のボールによってさらに軽減されて最後にヒューズの圧縮力となります。この組立荷重と軽減されてヒューズに加わる荷重のレバー比(ボールを使用していても、一般的にこの比率の事をレバー比と呼ぶ)は、レバー式と同様1/10以下に設定しています。耐衝撃型ヘッドの組立荷重はレバー式の1/5以下でした。つまり組立荷重が低く、レバー比が同じであるならば、当然ヒューズに加わる荷重もレバー式ヘッドよりも小さくなり、より安全な構造となっています。
 5.ボール式のメリット
 スプリンクラーヘッドのヒューズには決して高い強度はありません。そのためこのヒューズに加わる荷重を管理しコントロールする事は非常に重要となります。レバー式ヘッドは強力な内部荷重を“レバー”によって軽減させてヒューズに加えていました。つまりレバー式ヘッドは、このレバーの精度によってヒューズに加わる荷重を精密にコントロールしているわけです。そのためこの非常に小さな寸法の上複雑な形状をした“レバー”には極めて高い精度が要求されます。つまりレバー式ヘッドにとって、このレバーの精度とはヘッド自体のまさに生命であるとも言えるわけです。
 しかし耐衝撃型ヘッドのボール8点支持構造では、このレバーと同じ機能を果たす物が、ベアリングボールです。このボールは高精度な軸受けのボールベアリングに使用されている物で、高精度・高強度の特性があります。このベアリングボールをレバーの代わりに用いる事で、極めて高い精度での品質管理が、容易に行えます。

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